植物と昆虫 どっちがすごい?

植物や昆虫の生態や生存戦略から、人間の生き方を学ぶネイチャー・ライティング

 端にも置けぬ箸

飲食店ではプラスチック製の箸が多くなって、しばらく経ちました。

割り箸は木材を消費してしまうから、というので大手牛丼チェーン店などが割り箸からプラスチック箸に切り替えてきたのです。

岡山県西粟倉村でトビムシという会社が、ワリバシファンドなるものを使って、間伐材の需要を掘り起こそうとするプロジェクトを立ち上げています。

彼らは、日本の森から切り出された間伐材を使ったワリバシを使うと日本の森が元気になる、とアピールしています。

実際にワリバシの製造も手掛け、販路も自分たちで開拓しているのです。

「ワリバシなんか中国に勝てるわけない」という人がいると思います。

その通りで、ワリバシプロジェクトの割り箸のコストが一膳2.5円で、中国産の一膳1円と比べて見劣りします。

でも、プラスチック箸には洗浄、消毒に手間がかかることから、外食チェーンの幹部には「一膳2.5円なら太刀打ちできる価格だ」という人もいるようです。

でも、いま「自然を守ろう」=「木を切るな」の認識のある人たちをお客様として迎える商売の場において、割り箸を使うことは企業のマイナスイメージになると考えるのが当然でしょう。

「おっ、ここは日本の割り箸を使っているのか、感心だな」と思ってもらえるには、まだまだ長い道のりです。

でも、経済合理性だけを突き詰めるのではなく、理念に共感した商品・サービスを買おうというのも、消費者心理としては育ってきていると思います。そこを刺激していくのが、このワリバシファンドの命題になっているのだと思います。

消費者に「なぜ日本の間伐材を使うことが日本の森を守ることになるのか」を説明し、理解してもらうことが必要です。

地球温暖化などの環境問題、エコ意識といったものは、地球規模で語られることが多く、「使い捨てはすべて悪」の考えを持った人は多いのです。

こういう人に「使い捨ての割り箸を使うことが日本の森を守る」ということを説明して理解してもらい、さらに使ってもらうには大変な労力を要します。

では、なぜ間伐材を使うべきなのか。

世界的にみれば森林は伐採しないでおくことがいいとされていますが、日本とは事情が違います。

日本は戦後の復興期に住宅用建材の需要が急拡大したため、スギ、ヒノキといった針葉樹を大量に植林しました。

それが数十年経って、いまちょうど伐採の時期にさしかかっているのですが、経済成長期にその木材の成長が間に合わなかったため、外国の木材が輸入されるようになり、その安い外材に、日本の木材が価格で勝てなくなったのです。

いうまでもなく、日本では人件費が高いからです。それに、林業を産業として進化させていくことができなかったために、さまざまな技術が立ち遅れており、非効率になっているのも高コストの要因です。(その他にもいろいろ理由はありますが)

日本はこれから木材の自給率を高めていこうとしていますが、消費者の「志」に訴える以上に、林業の効率化を進めることが大切です。