植物と昆虫 どっちがすごい?

植物や昆虫の生態や生存戦略から、人間の生き方を学ぶネイチャー・ライティング

 ガンダムを歩けなくするもの  

お台場に「等身大」のガンダムが展示されていましたね。かつて展示されていたものが、一度、静岡に行き、またお台場に戻ってきていました。今度は、横浜で歩くガンダムをつくろうという計画もあるようです。

以前、このガンダムを話のネタに見に行ってきたのですが、それほど大きく感じませんでした。地上18メートルほどだから、4~5階建ての建物に相当します。見かけたお父さんが子どもに「これ本物と同じ大きさなんだよ」と説明していました。「本物」って……。

ガンダム核融合をエネルギー源として動くのですが、現実的な大きさに設定したのでしょう。同じくお台場にある自由の女神像は台座を含めて17.4メートルとガンダムより少し小さいようです。ちなみに、ニューヨークの本家・自由の女神像は93メートル(台座込み)とかなり大きいのです。

ガンダムの体重はというと、アニメの設定では43トンとなっています。ところが、これだけの大きさのものを43トンでつくるのは到底不可能で、いまの技術なら50トンは軽く超えるといいます。

物理学者に言わせると、それでもガンダムが地上を歩くことは困難。なぜなら50トンという重量が2本の足にかかってくると、足が大地にうずもれてしまい、まるで泥沼にはまったように身動きが取れなくなってしまうのです。だから、ガンダムは戦車のようにキャタピラで動くマシンでしか実現できないのです。

というのも、地球の大地は土に覆われているからです。地球の表面積のうち、7割が海で3割が陸地ですが、その陸地3割のうち、岩石で覆われた土地はほとんどなく、砂漠か森林以外は土壌のある土の大地と考えることができます。砂漠は岩石の大地が風化したものが積もったものと考えることができるので、砂漠と岩石以外の土地はすべて植物が繁茂する範囲となります。

実はガンダムの足が地面に埋まってしまうのは、この土のせいなのです。地球が岩石のみならガンダムは立って普通に歩けますが、土の上では歩くことができません。

土壌は岩石が風化したものと、植物や動物の遺体(リター)が混ざったものです。これらが堆積したところに、微生物が落葉を食べたり、分解したり、また小動物が移動するなどして、大小の穴ができます。この穴がスポンジの穴の役目を持ち、ふかふかの柔らかい土壌をつくります。だから、ガンダムの足はうずもれてしまうのです。

この大小の穴は水を蓄える元となります。雨が降ったとき、穴に入り込んだ水はゆっくり地表へと流れ出すので、川は容易に増水して氾濫することがないし、いつまでも渇水しません。

もし地球に生物が存在せず、岩石のままだったらそもそも人間自体が存在しません。かつての地球の表面はマグマがドロドロに溶けた状態でした。それが徐々に冷やされて岩石の地球ができ、海ができ、海の中で植物ができ、それらが光合成したおかげで動物が陸上に進出する余地ができたからです。

なにしろ、原始の地球には酸素がなかったのですから。いまでは大気の23%が酸素であり、地球上の土壌はすべて植物がつくったものといえます。途方もない時間をかけて植物がつくった世界がこの地球ということなのです。

ところで、アニメのガンダムの中でも地球の自然が失われてしまったために、人類は生きる道を宇宙に求めたのでした。ガンダムは夢のマシンですが、そんなのを兵器としてつくらなくてもいいような地球のままがいいですね。