植物と昆虫 どっちがすごい?

植物や昆虫の生態や生存戦略から、人間の生き方を学ぶネイチャー・ライティング

 生き残るための「ずらし」戦略  

小学校4年生のときの文集だったか、各クラス見開きのページに「なんでもチャンピオン」というテーマで、クラスの子一人ひとりがどんな分野でチャンピオンであるか、他の子が評価したものを載せていたのを思い出します。

ある子は「ピアノチャンピオン」、ある子は「お手伝いチャンピオン」、ある子は「笑顔チャンピオン」でした。私は誰が評価してくれたのか、「やさしさチャンピオン」でした。なんと取りつくしまのないふわっとしたチャンピオンなのでしょう。

同じ4年生でもこんな子もいるんだと思った子がいます。

山田駿佑くんです。現在、14歳の彼が小学4年生だったとき、家の前にはえていたオオバコに興味を持って研究しました。タイトルは「オオバコはなぜ道の真ん中に生えているのか」です。

彼はほかの植物と一緒にオオバコを育てながら、踏圧にどれだけ強いかを、漬物石を押し付けることで検証しました。2週間、毎日試した結果、他の植物は枯れてしまいましたが、オオバコだけは枯れるどころか生き生きしていました。

さらに彼はオオバコの種がネバネバしていることを発見します。踏まれた種が、人間や動物の足の裏にくっついて運ばれるようになっているわけです。靴の裏について運ばれた場合、どれだけ遠くまで行けるかを検証し、拡散能力を調べました。すると、なんと1キロ先まで種は落ちなかったというのです。

オオバコは、踏まれることに強くなることで、道の真ん中でも繁殖することができ、水や養分、日光を独占できることになりました。それに踏まれるという、植物にとって明らかに不合理な状況を逆手にとり、逆に種を広く拡散させることに成功したのです。

このことを知った山田君は、「自分は背が小さいけれど、それを生かすことができるんじゃないかと思って、勇気をもらいました」と、そんなことを言っていたのには大変感心しました。

競争に弱い、雑草のような植物は、真っ向勝負はしません。基本は闘わない。戦う場合でも場所をわきまえ、勝てるところだけで戦います。それがオオバコの場合、道の真ん中であったのです。

「踏まれてもへこたれないばかりか、それを逆に利用してやろう」

なかなかしたたかなやり方です。

「踏まれても踏まれても立ちあがる雑草のように」なんていうけれど、オオバコは立ち上がるような無駄なエネルギーは使いません。立ち上がるのではなく、死んでしまわないことだけを考えているように思います。そして、自分が勝てそうなところで生きていく。道の端っこではナンバーワンになれないが、人や動物に踏みつけられる道の真ん中ならナンバーワンになれる。私たち人間の生き方も、そうやればいいのではないでしょうか。

道の脇ではなく、ちょっとずらして、道の真ん中で勝負する「ずらし戦略」を使えば、オンリーワンの場所で、ナンバーワンになれるのです。オオバコはそんなことを教えてくれます。

スポーツや勉強でナンバーワンになれなくても、どこかの分野でナンバーワンになればいい――そう、私が何も個性がなかったばかりに「やさしさチャンピオン」になったように。