植物と昆虫 どっちがすごい?

植物や昆虫の生態や生存戦略から、人間の生き方を学ぶネイチャー・ライティング

 ピンチはチャンス! 上がダメなら横へ  

いまだいたいの小学校で1年生になると、アサガオを育てているはずです。その理由としては、アサガオが比較的強い植物だからだと思います。

タネを植えるとだいたい発芽します。子供が持ち帰ったアサガオから種を取ったときに、はじけて飛んだ種が庭に転がり、秋なのに発芽したことがあります。

水さえ与えていれば育つし、少し乾燥しても簡単に枯れません。成長も早くて、すくすく伸びます。視覚的に明らかに成長していくので、子どもとしてもわかりやすいのだと思います。

アサガオといえば、「ヨウ素でんぷん反応」を思い出す人も多いのではないでしょうか。葉っぱにアルミ箔を巻いて、巻いた箇所と巻かなかった箇所を観察します。

すると、巻かなかった箇所は、葉が紫色に変色しますが、巻いた箇所は変色しません。うがい薬に含まれるヨウ素がでんぷんと反応して色が変わったと習ったはずです。

アサガオはツル状の植物で、どんどん上に伸びていきます。ツルの先端を頂芽といい、ここが成長していきます。葉のそばにはわき芽(腋芽)がちょっと顔を見せています。

なぜわき芽があるかというと、頂芽が何らかの理由で切断されてしまった場合、わき芽が伸びて成長していこうとするからです。でも、このわき芽は頂芽が順調に伸びているときは、成長しません。このことを頂芽優勢といいます。

頂芽にしてみれば、わき芽に対して「おれが伸びるから、お前はもしものときに待機しといてくれ」といった感じでしょうか。頂芽が順調に育っているときは、わき芽が伸びないように、わき芽の成長を抑えるオーキシンという植物ホルモンが頂芽から出ています。

オーキシンは頂芽で作られているため、頂芽がなくなると、オーキシンも出なくなり、わき芽が伸びるというわけです。

先端の芽をつまむことを、「ピンチ(Pinch)」といいます。芽をつまれることはピンチ(危機)であるわけですよ。でも、芽を摘まれて危機に陥ったとしても、別の方法で、別の方向へ伸びていくことで生きながらえることができるのです。

どこかが傷ついてもそれで諦めたりしない。そこを修復したり、別のところを伸ばしたりして、成長していく。それはすべて仲間を増やしていくためです。

上に伸びられないなら、横へ行けばいいのです。上に行くだけが光を得られる条件だと考えているのですが、そこにスペースさえあれば、横へ行くことでも光を得られるのです。

人間も同じではないでしょうか。昇進できなくて、左遷されても、そこでも給料は支払われるわけですよ。苦しいときは上に行くしか自分の生きる道はないと思い込んでしまいます。

でも、少し視点をそらしてみたら、それだけではない生き方もあることに気づけます。左遷された先で結果を出して、大いに出世する人はたくさんいます。ピンチをチャンスに変えることもできるはずなのです。

小学1年生でアサガオを栽培するのは、朝学校に行くと咲いているのを楽しみにできるようにという理由もあるようです。幼稚園や保育権から、いきなり机に何時間も座って過ごすようになる小学1年生には、そういう仕掛けも大事ですよね。

1年生にはそれだけじゃなく、傷ついても傷ついてもその都度、対応して生きていくアサガオのたくましさにも気づいてほしいものです。